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IPO支援に関連した株価等財産評価のポイント

<株価等財産評価の概要>
IPO支援に関連した株価等財産評価は、企業が上場する前における企業再編や資本政策等において、持株会社やスピンオフする会社、さらには資産管理会社など、当該会社の株式の適正な価格を評価するプロセスです。これは上場前における関連当事者取引にも該当する可能性が高いため、企業が公正な価格で取引を行うために不可欠であり、評価の精度と透明性が求められます。
1.株価等財産評価で取り組むこと
企業価値の算定
(1)財務情報の分析:
企業の財務諸表(バランスシート、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)を詳細に分析し、過去の業績や現在の財務状況を評価します。
(2)事業計画の評価:
会社が策定した中長期(3~5年程度)の事業計画を精査し、売上予測やコスト構造の適切性を評価します。
(3)市場調査:
企業が属する業界や市場の動向を調査し、競合他社との比較や市場成長性を分析します。
評価手法の選定
(1)DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法):
将来のキャッシュフローを現在価値に割引いて企業価値を算定する方法。将来の収益性・キャッシュフローの妥当性が株価に大きく影響します。
(2)マーケットアプローチ:
マルチプル法や類似業種比準法など、競合他社の市場価格を基準にして企業価値を算定する方法。例えば、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)を使用します。業種、ビジネスモデル、収益構造、成長性などから妥当な比較対象を選定することがカギとなります。
(3)コストアプローチ:
純資産法など、企業の再調達価格を基に算定する方法。事業の性質や財産評価の目的によって使用されます。
その他の評価項目
(1)無形資産の評価:
ブランド価値や特許など、企業が保有する無形資産も評価対象に含まれます。
(2)ストックオプションの評価:
役員・従業員に付与されるストックオプションの評価も行い、総所有者利益の視点から企業価値に影響を与える要素とします。潜在株式の希薄化効果を織り込んだ評価が必要です。
2.注意点とポイント
法令遵守とガバナンス
(1)法的基準の準拠:
評価プロセスは、金融商品取引法や証券取引所の規則など、各種法令やガイドラインに従って行う必要があります。
(2)ガバナンス体制との整合性:
評価は単体でなく、資本政策(株式発行のタイミング・金額等)やガバナンス体制とセットで検討されます。
開示とコミュニケーション
(1)投資家とのコミュニケーション:
評価結果は投資家に対して透明かつ誠実に開示することが求められます。また、投資家との質疑応答を通じた信頼構築も重要です。
(2)関係者との連携:
証券会社、監査法人、法律事務所など、評価に関与する外部専門家との連携が必要です。適切なタイミングで情報を共有し、調整を行います。
税務と法務の観点
(1)税務リスクの管理:
評価に関して税務リスクを評価し、適切な税務申告が必要です。税務面でのアドバイスを受けることも重要です。
(2)法的整合性:
株式評価が法律や契約に抵触しないように注意深く進めます。特に、既存の株主や新規投資家との契約内容に基づいた調整が重要です。
実務経験と専門知識
(1)専門家の活用:
公認会計士、税理士、弁護士などの専門家と積極的にやり取りをすることで、専門知識に基づく評価を実施します。
(2)最新のガイドラインの理解:
評価に関する最新の規則やガイドラインを把握し、適用します。IPOプロセスは常に進化しているため、継続的な学習が必要です。
まとめ
株価等財産評価は、IPO支援において重要な役割を担い、各社の株式価値を正確に評価するためのプロセスです。このプロセスには多くの要素が関与し、注意すべき点が多岐にわたります。評価手法の選定から財務情報の詳細分析、法令遵守と内部統制の整備、税務・法務リスクの管理、専門家の活用まで、すべてのステップを慎重に進めることが求められます。また、総合的なサポート、迅速な問い合わせ対応、定期的な相談機会の提供も成功の鍵となります。正確な評価を行うために、企業は公認会計士、税理士法人、監査法人、証券会社などの専門家と緊密に連携し、綿密な計画と準備を進めることが不可欠です。IPO支援関連した株価等財産評価は、企業が市場での信頼性を確立し上場を果たすための重要なステップとなります。
終わりに
貴重なお時間、最後までコラムをお読み頂き、誠にありがとうございました。弊社はデロイトトーマツ出身のメンバーで構成されたプロフェッショナルチームによる20年以上の経験を活かした、質の高い税務サービスやコンサルティングサービスを提供しております。お客様のお悩みに併せて案件の大小、事務所の規模感問わずこれまでに多くの企業様の税務課題を解決し、ビジネス成長をサポートしてまいりました。お読みいただいたご感想、またちょっとしたことでもIPOに関するご質問や、サービス紹介/コンサルティング&サポート/税務・会計顧問に関するご検討事項ございましたら、こちらのお問合せページから何なりとご連絡を頂けましたら幸いです。
この記事を書いた人

共同代表
(公認会計士・税理士・CFP)
熊谷 和哉
2000年有限責任監査法人トーマツ入社、上場会社の会計監査とともに、会計基準対応・IPO支援・内部統制構築等アドバイザリー業務に従事
2021年、20年超所属したトーマツ退社後、これまでの経験・知見を活かして自らが主体となるべく、デロイト トーマツ出身者を中心とした税理士法人・会計コンサルティングファームであるコンフィアンスグループを設立し共同代表として参画