トピックス

あなたの会社は大丈夫?IPO準備で起きやすい“盲点”5つ

この記事は、これからIPO(新規株式公開)を目指す経営者や管理部門の責任者、IPO準備担当者に向けて「IPO準備で起きやすい“盲点”5つ」について解説しています。IPO準備の全体像やスケジュール、よくある“盲点”やリスク、IPO準備で失敗しないためのポイントを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

IPO税理士

IPO準備とは?基本概要と進め方を解説

IPO準備とは、企業が株式を証券取引所に上場するために必要な体制や制度、書類、業務フローなどを整備する一連のプロセスを指します。上場を目指す企業は、会計監査や内部統制、情報開示体制の構築、法令遵守、株主管理など多岐にわたる課題に対応しなければなりません。IPO準備は数年単位の長期プロジェクトとなるため、計画的なスケジュール管理と専門家のサポートが不可欠です。また、IPO準備を通じて企業のガバナンスや透明性が高まり、上場後の成長基盤を築くことができます。

IPO(新規上場)と上場準備の意味・目的

IPO(Initial Public Offering)とは、企業が初めて株式を公開市場で売り出し、証券取引所に上場することを指します。上場準備の主な目的は、資金調達力の強化、企業価値の向上、社会的信用の獲得、優秀な人材の確保などです。また、上場企業として求められるガバナンスや情報開示体制を整えることで、経営の透明性や持続的成長を実現しやすくなります。IPO準備は単なる手続きではなく、企業の成長戦略の一環として位置付けられます。

〇資金調達力の強化
〇企業価値・ブランド力の向上
〇社会的信用の獲得
〇人材採用・定着の促進
〇経営の透明性・ガバナンス強化

IPO準備企業が押さえるべき全体スケジュール

IPO準備は一般的に3年前後の期間を要し、各段階でクリアすべき課題やタスクが明確に分かれています。まず、上場意思決定から事業計画・資本政策の策定、監査法人や主幹事証券会社の選定、内部統制や管理体制の構築、会計監査の受入れ、上場審査書類の作成・提出といった流れで進みます。スケジュール管理を怠ると、監査法人の選定遅れや審査書類の不備など、致命的なトラブルにつながるため注意が必要です。

IPO_税理士_飯田橋

 

IPO準備期間の目安と段階的な流れ

IPO準備の期間は、企業の規模や現状によって異なりますが、一般的には3年前後が目安とされています。準備は大きく「意思決定・計画策定」「体制構築・監査対応」「審査・申請」の3段階に分かれます。初期段階では、上場の意思決定とともに、事業計画や資本政策の見直し、IPOプロジェクトチームの編成が行われます。次に、内部統制や管理体制の整備、会計監査の受入れ、必要な規程やルールの整備が進められます。最終段階では、上場審査書類の作成や証券取引所・証券会社とのやり取り、上場申請・審査対応が中心となります。

〇意思決定・計画策定(N-3期)
〇体制構築・監査対応(N-2期)
〇審査・申請(N-1期~N期)

【要注意】IPO準備で起きやすい“盲点”5つとは

IPO準備は多岐にわたる業務が発生するため、想定外の“盲点”に陥りやすいのが実情です。特に、経理・財務体制の整備不足や内部統制の遅れ、情報管理リスク、業務量の急増、社内外の連携ミスなどは、上場準備企業が直面しやすい代表的な課題です。これらの盲点を事前に把握し、適切な対策を講じることで、IPO準備の失敗リスクを大幅に減らすことができます。以下で、具体的な“盲点”5つについて詳しく解説します。

〇経理・財務体制の整備不足
〇内部統制・管理体制構築の遅れ
〇情報管理リスクへの甘さ
〇業務量の増加・激務化
〇社内外の役割分担・連携ミス

盲点① 経理・財務体制の整備不足

IPO準備で最も多い失敗例が、経理・財務体制の整備不足です。上場審査では、過去数年分の会計帳簿や決算書の正確性、会計基準への適合性が厳しくチェックされます。経理担当者の経験不足や人手不足、会計システムの未整備、証憑管理の不備などがあると、監査法人から指摘を受け、上場スケジュールが大幅に遅延するリスクがあります。早期から専門家のアドバイスを受け、経理・財務体制の強化を図ることが重要です。

〇会計帳簿・決算書の正確性
〇会計基準(日本基準・IFRS等)への適合
〇証憑管理・内部監査体制の整備
〇経理人材の確保・育成

盲点② 内部統制・管理体制構築の遅れ

上場企業には、法令遵守やリスク管理、業務プロセスの透明性を担保するための内部統制が求められます。しかし、IPO準備企業の多くは、内部統制の構築や運用が後回しになりがちです。規程やルールの未整備、承認フローの不備、権限分掌の曖昧さなどがあると、上場審査で大きな減点要因となります。内部統制の整備は一朝一夕には進まないため、早期から計画的に取り組むことが不可欠です。

〇社内規程・ルールの整備
〇承認フロー・権限分掌の明確化
〇リスク管理・コンプライアンス体制の構築
〇内部監査の実施・記録

盲点③ “口外禁止”など情報管理リスクへの甘さ

IPO準備期間中は、上場計画や財務情報などの機密情報が社内外に広がるリスクが高まります。特に“口外禁止”の徹底が不十分だと、インサイダー取引や情報漏洩といった重大なトラブルにつながりかねません。情報管理規程の整備や、従業員・関係者への教育、アクセス権限の厳格な管理が不可欠です。また、外部パートナーやコンサルタントとの契約時にも、秘密保持契約(NDA)を必ず締結しましょう。

〇情報管理規程の策定・運用
〇従業員・役員への教育・啓発
〇アクセス権限の厳格な管理
〇外部委託先とのNDA締結

盲点④ IPO準備で発生する激務・業務量の増加

IPO準備は通常業務に加え、膨大な書類作成や監査対応、社内体制の見直しなどが重なり、担当者の業務負荷が急増します。特に経理・管理部門は“激務”となりやすく、離職やミスのリスクも高まります。業務分担や外部リソースの活用、プロジェクト管理ツールの導入などで、負担を分散しながら効率的に進めることが重要です。早めの人員補強や業務フローの見直しも検討しましょう。

〇業務分担・外部リソース活用
〇プロジェクト管理ツールの導入
〇人員補強・業務フロー見直し
〇担当者のメンタルケア

盲点⑤ 社内外の役割分担・連携ミス

IPO準備は社内の複数部門や外部専門家(監査法人、証券会社、コンサル等)との連携が不可欠です。しかし、役割分担が曖昧だったり、情報共有が不十分だと、タスクの抜け漏れやスケジュール遅延が発生しやすくなります。定期的な進捗会議やタスク管理表の活用、責任者の明確化などで、社内外の連携ミスを防ぎましょう。

〇役割分担・責任者の明確化
〇定期的な進捗会議の実施
〇タスク管理表・プロジェクト管理ツールの活用
〇外部専門家との密な連携

IPO準備企業が直面しやすいその他の課題・リスク

IPO税理士

IPO準備では、上記の“盲点”以外にもさまざまな課題やリスクが存在します。たとえば、IPO準備会社やコンサルティング会社の選定ミス、監査法人や主幹事証券会社との連携不足、システムや業務運用の変更対応、株主管理や契約書類の不備などが挙げられます。これらのリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることが、スムーズなIPO実現のカギとなります。

〇コンサル・監査法人・証券会社の選定ミス
〇システム・業務運用変更への対応遅れ
〇株主管理・契約書類の不備
〇外部専門家との連携不足

IPO準備会社選定やコンサルティング会社の活用

IPO準備を円滑に進めるためには、経験豊富なコンサルティング会社や専門家のサポートが有効です。しかし、コンサル会社の選定を誤ると、費用対効果が低かったり、ノウハウが不足している場合もあります。複数社から提案を受け、実績やサポート体制、費用体系を比較検討しましょう。また、社内のプロジェクトチームと外部コンサルの役割分担も明確にすることが重要です。

IPO_準備_税理士_飯田橋

監査法人・主幹事証券会社の選定と連携ポイント

監査法人や主幹事証券会社は、IPO準備の成否を左右する重要なパートナーです。監査法人は会計監査や内部統制の評価を担当し、主幹事証券会社は上場審査や資本政策、IR活動などをサポートします。選定時は、IPO支援実績や担当者の経験、コミュニケーションのしやすさを重視しましょう。また、定期的な打ち合わせや情報共有を徹底し、連携ミスを防ぐことが大切です。

〇IPO支援実績・担当者の経験
〇コミュニケーションのしやすさ
〇定期的な打ち合わせ・情報共有
〇役割分担の明確化

IPO準備期間中のシステム・業務運用変更への対応

IPO準備中は、会計システムや人事労務システム、内部統制ツールなどの導入・変更が必要になる場合があります。システム変更は業務フローやデータ管理に大きな影響を与えるため、事前の計画と十分なテストが不可欠です。また、従業員への教育やマニュアル整備も怠らないようにしましょう。システムベンダーや外部専門家と連携し、スムーズな移行を目指しましょう。

〇システム導入・変更の計画立案
〇十分なテスト・検証
〇従業員教育・マニュアル整備
〇ベンダー・専門家との連携

株式・株主管理や契約、書類作成の留意事項

IPO準備では、株式や株主名簿の管理、各種契約書類の整備・作成も重要なポイントです。株主構成やストックオプションの設計、株主間契約の内容などは、上場審査で厳しくチェックされます。また、契約書類や申請書類の不備は、上場スケジュールの遅延や審査落ちの原因となるため、専門家のチェックを受けることをおすすめします。

〇株主名簿・ストックオプション管理
〇株主間契約・各種契約書の整備
〇申請書類の正確な作成
〇専門家による書類チェック

 

まとめ:IPO準備の落とし穴を回避し、上場成功へ

IPO準備は長期にわたり多くの課題やリスクが伴いますが、事前に“盲点”や失敗事例を把握し、計画的に対策を講じることで、上場成功の可能性を大きく高めることができます。経理・財務体制や内部統制、情報管理、業務分担、人材確保など、各ポイントを押さえたうえで、外部専門家や支援サービスも積極的に活用しましょう。自社に合った最適な準備体制を整え、IPOという大きな目標を確実に達成してください。IPO準備は長期にわたり専門知識や体制整備が求められるため、どうしても不安や疑問がつきものです。

当事務所では、これまで多数のIPO支援を行ってきた経験をもとに、企業ごとの状況に合わせた最適なサポートをご提供しています。「自社の準備は本当に大丈夫だろうか」と感じたら、まずはお気軽にご相談ください。少し話を聞いてみたいと思ったそのタイミングが、準備の第一歩です。どうぞ気軽にお問い合わせください。

IPOお問い合わせ

 

この記事を書いた人

共同代表
(公認会計士・税理士・CFP)

熊谷 和哉

2000年有限責任監査法人トーマツ入社、上場会社の会計監査とともに、会計基準対応・IPO支援・内部統制構築等アドバイザリー業務に従事
2021年、20年超所属したトーマツ退社後、これまでの経験・知見を活かして自らが主体となるべく、デロイト トーマツ出身者を中心とした税理士法人・会計コンサルティングファームであるコンフィアンスグループを設立し共同代表として参画