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IPOを目指す企業が準備段階で取り組むべき事業計画書とは?成功のカギを解説

【目次】
1. はじめに|なぜ「IPOを目指す」企業に事業計画書が不可欠なのか
2. 事業計画とは
3. IPO準備における事業計画書の役割とは
4. よくある失敗|IPOを目指す企業が陥りがちな事業計画の問題点
5. 事業計画書を作成する上での5つの重要ポイント
6. 事業計画書策定のステップ|環境分析から目標設定まで
7. まとめ|IPO成功のカギは「伝わる事業計画書」にある
はじめに|なぜIPOを目指す企業に事業計画書が不可欠なのか
「IPOを目指す」と決意した瞬間から、企業経営は次のステージへと進みます。IPO(新規株式公開)は、資金調達だけでなく、企業の社会的信用やブランド力の向上にもつながる重要な節目です。しかし、IPOを実現するには数々の要件をクリアする必要があり、その中でも核となるのが「事業計画書」です。IPO準備において、監査法人や証券会社、証券取引所、そして投資家といったあらゆるステークホルダーに「この企業に将来性がある」と思ってもらうためには、具体性と信頼性を備えた事業計画書が欠かせません。
1.事業計画とは
事業計画とは、企業が中長期的にどのような目標を持ち、どのような戦略でそれを実現していくのかを明確に示すものです。単なる売上予測や利益の見込みではなく、
- 事業ドメイン
- 市場環境の分析
- 成長戦略
- 組織体制
- 財務戦略
- リスク管理
などを網羅した包括的な経営設計図です。
IPOを目指す企業にとっては、社内外のステークホルダーと共通認識を持つための重要なコミュニケーションツールでもあります。計画の説得力が弱ければ、証券会社や投資家からの信頼を得ることはできません。
2.IPO準備における事業計画書の役割とは
IPO準備では、企業の将来像や成長戦略をわかりやすく伝えることが必要不可欠です。事業計画書は、そうした企業の「未来」を客観的に示すための証拠資料としての役割を担います。
【事業計画書の主な役割】
- 財務計画(売上・利益・資金計画)の根拠提示
- 中長期的な成長戦略の説明
- 競争優位性の整理
- 上場後の経営ビジョンと体制の説明
- 投資家への信頼形成
このように、事業計画書は単なる社内資料ではなく、IPO審査における“成否を左右する資料”ともいえる重要書類です。
3.よくある失敗|IPOを目指す企業が陥りがちな事業計画の問題点
IPOを目指して事業計画書を作成する企業の中には、以下のような誤った作り方をしてしまうケースも見られます。
【よくあるケース】
- 現実とかけ離れた売上・利益予測
- 市場調査・競合分析の不十分さ
- 根拠のない投資計画
- 社内体制の未整備(内部統制・ガバナンス)
- 曖昧なリスク管理方針
これらの失敗は、証券会社や投資家からの評価を大きく下げてしまいます。実現可能性のある、かつ客観性の高い計画を策定することが必要不可欠です。
4.事業計画書を作成する上での5つの重要ポイント
1.3~5年スパンの財務計画を立てる
IPO審査では、中期的な利益成長が重視されます。そのため、売上高や営業利益、純利益の3~5年分の予測を具体的に提示しなければなりません。
2.ビジョンと戦略の整合性を図る
経営理念・ミッションと、実際の戦略が一致していなければ信頼性は下がります。なぜこのビジネスモデルを選んだのか、なぜこの市場を狙うのかといった論理的なつながりが必要です。
3.市場・競合分析を具体的に行う
市場規模、成長率、参入障壁、競合他社の動向などを含め、数値ベースの分析を行いましょう。PEST分析やSWOT分析が効果的です。
4.内部統制とガバナンス体制を整備する
上場企業に求められる透明性・ガバナンス対応力を示すためには、取締役会の構成や監査体制を文書化しておくことが重要です。
5.資料としての分かりやすさ・構成にこだわる
計画の中身がよくても、資料として読みづらければ意味がありません。図表やフロー図を活用し、視覚的なわかりやすさも意識しましょう。
5.事業計画書策定のステップ|環境分析から目標設定まで
ここでは、IPOを目指す企業が事業計画書を策定する際の基本的なステップをご紹介します。
1.環境分析(マクロ+ミクロ)
事業を取り巻く環境を正しく把握することが出発点です。外部環境・内部環境を分析し、事業機会と脅威、企業の強みと弱みを明らかにします。
2.外部環境分析(PEST分析・業界分析)
- 政治(Politics):規制や税制、政策動向
- 経済(Economy):市場動向、為替、金利、景気予測
- 社会(Society):消費者ニーズ、ライフスタイルの変化
- 技術(Technology):業界の技術革新、競争優位性への影響
業界構造分析(ファイブフォース分析)も有効です。
3.内部環境分析(経営資源の棚卸し)
- 組織の強みと弱み
- 技術力、ノウハウ
- 人材・資本・ブランド力
- 組織体制やリーダーシップの有無
これらの情報をもとに自社のコア・コンピタンス(中核的競争力)を明確にしていきます。
4.戦略立案・目標設定
市場の機会と自社の強みを掛け合わせ、今後の成長戦略を立案します。KPIを設けた具体的な目標設定(SMART原則など)がポイントです。
まとめ|IPO成功のカギは「伝わる事業計画書」にある
IPOを目指す企業にとって、事業計画書は単なる“審査書類”ではなく、企業の未来を描く戦略書であり、信頼を勝ち取るためのコミュニケーションツールです。
経営陣のビジョンを論理的に整理し、成長の根拠と計画を数値と共に提示することが、上場成功への第一歩です。
📌 IPOを目指す企業の皆様へ
「自社の事業計画書は、投資家にとって魅力的か?」
今一度、環境分析・財務戦略・戦略の整合性の観点から、チェックしてみてください。最後までコラムをお読み頂き、誠にありがとうございました。弊所はデロイトトーマツ出身のメンバーで構成されたプロフェッショナルチームによる20年以上の経験を活かした、質の高い税務サービスやコンサルティングサービスを提供しております。お客様のお悩みに併せて案件の大小、事務所の規模感問わずこれまでに多くの企業様の税務課題を解決し、ビジネス成長をサポートしてまいりました。IPO準備は、専門的な知識と知恵を必要とするプロセスです。困難に直面することがあれば、早めの相談が成功への近道となります。当事務所では、税務や財務、法務面など幅広い支援を提供するとともに、IPO経験豊富なネットワークを活用して、企業の課題を解決します。
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この記事を書いた人

共同代表
(公認会計士・税理士・CFP)
熊谷 和哉
2000年有限責任監査法人トーマツ入社、上場会社の会計監査とともに、会計基準対応・IPO支援・内部統制構築等アドバイザリー業務に従事
2021年、20年超所属したトーマツ退社後、これまでの経験・知見を活かして自らが主体となるべく、デロイト トーマツ出身者を中心とした税理士法人・会計コンサルティングファームであるコンフィアンスグループを設立し共同代表として参画