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IPOを目指す企業必見!準備で陥りやすい盲点と成功のための対策まとめ

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IPO(新規株式公開)を目指す企業にとって、準備段階での取り組みは思っている以上に大きな意味を持ちます。必要な人材の確保、管理部門の強化、会計・財務体制の整備、そして証券会社や監査法人との連携。これらの対応が十分でなければ、上場審査の場面で思わぬ壁に突き当たり、計画が大幅に遅れることも珍しくありません。実務の現場でよく耳にするのが、「どの体制をいつまでに構築しておくべきか」「どの段階でどの資料を作成・提出するか」という点での準備不足です。ここを見誤ると、上場審査で重大な問題に発展しかねません。本コラムでは、IPO準備に必要となる人材や組織体制の整え方、採用市場の現実、激務をどう乗り越えるか、費用やスケジュールの考え方、そして審査対応の流れまでを税理士の立場から整理しました。計画的に進めるための参考にしていただければ幸いです。

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IPO準備に必要な人材・組織体制と“激務”対策

IPOを志す企業が最初に直面する大きな課題は「人材」と「体制」です。会計や財務、法務、内部統制の機能まで、幅広い専門知識が求められます。一般的な経営管理の延長ではカバーできず、社内リソースだけで乗り切ろうとすると無理が生じます。そのため、監査法人や証券会社といった外部との連携を早い段階で構築しておく必要があります。実務では「この時期にここまでやっておく」という基準を明確にしないと、段階ごとに業務が雪だるま式に膨らみます。また、IPO準備は時間も労力も想像以上にかかり、担当者が“激務”に陥りやすいのが現実です。そこで、社内でプロジェクトチームを組織し、役割分担を明確にすることが不可欠です。タスクの見える化や進捗の定期報告といった管理の仕組みを導入することで、無理なく対応できる体制が整います。

 

CFOや社外取締役の役割と必要な経験

IPO準備を進めるうえで、財務に精通したCFOや、経営の透明性を高める社外取締役の存在は欠かせません。CFOは資金調達や財務戦略の策定をリードし、投資家に対する説明責任を果たす中心的な役割を担います。一方、社外取締役はガバナンス強化の視点を持ち込み、社内だけでは見えないリスクを指摘してくれます。審査では「経験豊富な人材が社内にいるか」が必ずチェックされます。過去にIPOを経験した人材や、監査法人・証券会社との実務調整に慣れた人が加わることで、審査対応は格段にスムーズになります。必要に応じて外部から登用し、早めに経営体制を整えておくことをお勧めします。

 

経理・管理部門の強化とチーム編成

IPOの準備段階で特に負担が大きいのは、経理・管理部門です。決算の早期化、正確な資料の作成、会計処理の改善、内部統制制度の実施。これらは日常業務を超えた高度な対応を求められます。実際、証券取引所や証券会社に提出する資料は数百ページに及ぶことも珍しくありません。経理部門単独では処理しきれず、プロジェクト専任チームを設け、各部門から担当を配置することが現実的です。誰がどのタスクを担当するかを明確にし、進捗を管理する仕組みを整えることが不可欠です。また、最新の会計基準や制度改正に対応するには、外部コンサルタントの支援を取り入れるのが実務的です。社内と外部のリソースを組み合わせることで、効率的で確実な準備が進められます。

 

採用市場の現実と人材確保の工夫

IPO準備経験を持つ人材は希少で、採用市場では常に争奪戦となっています。単に報酬を上げるだけでなく、柔軟な働き方やキャリアパスを提示することで魅力を高める必要があります。人材紹介会社や専門ネットワークを活用し、短期的な採用と並行して社内育成の制度を整えることも大切です。研修や実務データを用いた教育を通じて、将来的にIPO業務を担える人材を育てていくことが、長期的な経営基盤の強化につながります。

 

激務を乗り越える実務対応

IPO準備では通常業務に加え、監査法人対応、証券会社向け資料作成、内部統制制度の整備などが重なります。その結果、「時間が足りない」「資料が間に合わない」といった問題が必ず発生します。この状況を乗り越えるには、プロジェクト管理ツールの導入やタスクの優先順位付けが必須です。実務では「やることを増やす」のではなく「やらないことを決める」判断も重要になります。場合によっては外部に一部業務を委託し、社内担当の負担を和らげることも検討すべきです。

 

費用とスケジュールの考え方

IPO準備には数年単位の時間と多額の費用がかかります。監査法人や証券会社への報酬だけでなく、法務・税務の顧問料、システム導入費用、印刷費用など、各種のコストが発生します。資金調達計画を早い段階で策定し、IPO関連費用を正確に把握しておくことが肝心です。VCからの出資、金融機関からの融資、社債発行など複数の手段を組み合わせて準備資金を確保しておくのが望ましいでしょう。

 

上場審査・申請の流れと注意点

最終段階では、証券取引所への申請と審査対応が必要になります。申請書類の作成や提出、監査法人・証券会社とのやり取り、審査基準の把握。これらは経営陣が一体となって取り組むべき大仕事です。特に、書類の不備や開示の遅れは上場延期につながる致命的な問題となります。各種調査データを整理し、提出までのフローを改善することでリスクを軽減できます。

 

外部サポートの活用

IPO準備を効率的に進めるには、外部コンサルティングやアウトソーシングの利用も有効です。業務範囲や契約条件を明確にし、代行可能なタスクは外部に委託することで社内負担を軽減できます。ただし、成果物の確認を怠ると後で問題が発生することもあります。進捗を定期的にチェックし、必要に応じて改善策を講じる姿勢が求められます。

 

まとめ:盲点を押さえ、安心して上場へ

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IPO準備は長期にわたり膨大な業務と課題を伴いますが、あらかじめ盲点を把握し、体制を整えておけば成功の可能性を大きく高められます。人材の確保や管理部門の強化、会計・財務体制の整備、審査対応の準備を計画的に進め、外部の力も上手に取り入れてください。そうすれば、投資家から信頼される企業として、安心して上場の舞台に立つことができます。当事務所では、これまで多数のIPO支援を行ってきた経験をもとに、企業ごとの状況に合わせた最適なサポートをご提供しています。「自社の準備は本当に大丈夫だろうか」と感じたら、まずはお気軽にご相談ください。少し話を聞いてみたいと思ったそのタイミングが、準備の第一歩です。どうぞ気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

共同代表
(公認会計士・税理士・CFP)

熊谷 和哉

2000年有限責任監査法人トーマツ入社、上場会社の会計監査とともに、会計基準対応・IPO支援・内部統制構築等アドバイザリー業務に従事
2021年、20年超所属したトーマツ退社後、これまでの経験・知見を活かして自らが主体となるべく、デロイト トーマツ出身者を中心とした税理士法人・会計コンサルティングファームであるコンフィアンスグループを設立し共同代表として参画